池田清彦『構造主義科学論の冒険』

最近池田清彦さんの本を読み漁っている訳ですが、文庫版のまえがきを立ち読みしてつい衝動買いしてしまったのがこの本です。いきなり社会生物学の悪口ですから、つかみとしては十分ですよ。
正直文系(というか美術系)の自分としては科学のことはよくわからない訳です。なので序盤のソシュールの話は学生の頃一応記号論を受講していたので割りとよくわかったんですが、中盤の科学の話はわからないながらもがんばって読みました。で、終盤は多元主義社会を提唱して終わりです。
おもいっきり簡単に内容をまとめると、科学は絶対的な真理を追求すると思われていますが実は科学であっても文化などと同じように相対化できますよ、ということが書いてあります。最後に多元主義社会には科学の真理性は有害だとまで言い切っちゃってます。
多元主義社会ってのは同じ著者の『正しく生きるとはどういうことか』という本にも出てくる恣意性の権利を擁護する社会です。オレも多元主義社会は理想とする社会だと思うんです。それでふとデザインについて前から思っていることが頭をよぎったんです。
それはオレの好きな原研哉さんや深澤直人さんのようなデザイナーのデザインが目立つのは、世の中全体を見渡すとこういうデザインが少ないからだよなーと思っていたんです。だからといって、オレはこういうデザインばかりになればいいなーとは思っていないんです(もうちょっと増えればいいなとは思いますが)。自分の基準でいいと思うものがあるのは、同じように自分の基準でいいと思わないものがあるためだからです。新聞のチラシや街の看板に赤と黄色、さらには蛍光色を使えば目立つと思っているものがありますが、あれなんかは最悪のデザインの見本みたいなものですよね。でもなくなればいいとは思わないんです。あれはあれで良しとして作っている人がいる以上、良しとして見る人もいるんですから。
とまぁ、オレが池田清彦さんの本をなんで好んで読んでいるのかというと自分が漠然と思っていたことを理論的にバシッと書いてくれているからなんだろうなと思った次第なわけです。

構造主義科学論の冒険 (講談社学術文庫)

構造主義科学論の冒険 (講談社学術文庫)